「日本の借金」は1,000兆円超(世界2位)・GDP比256.9%(G7トップ)…でも日本が「財政破綻」しないと断言できるワケ

image 高校での投資教育が必須になるなど、経済に対する教育への関心が高まっています。そこで本連載では、専門的な知見を生かし、経済に関するニュースをわかりやすく解説することで人気を博している経済キャスターのDJ Nobby氏が、著書である『実は大人も知らないことだらけ 経済がわかれば最強!』(KADOKAWA)から、日本と世界の経済について解説します。

気になる日本の借金事情

日本は世界でもトップクラスの借金大国だという報道を耳にしたことがある人も多いのではないでしょうか。

実は、日本政府は1,000兆円を超える借金を抱えています。「これほど多額の借金を背負ったら国が破綻してしまうのでは?」と心配する人もいるかもしれませんが、その心配はありません。

なぜ日本は多額の借金があっても財政破綻しないのか。日本の借金事情について説明していきましょう。

■TOPICS

どんどん増えていく日本の借金

国の借金である政府の債務は、2022年3月末時点で1,241兆円3,074億円と過去最大を更新しました。2021年3月末と比べると、24兆8,441億円増加。債務総額は、6年連続で“過去最大”を更新しました。

日本の借金の裏側にある「少子高齢化問題」

国が借り入れをするために発行する借用証書ともいえる、国債。

日本国債の発行残高は、現在約1,000兆円。日本のGDPがおよそ500〜550兆円ですので、日本全体で2年間かけて稼ぎ出す金額の借り入れがあることがわかります。

また、下の[図表1]を見るとわかるように、GDP比で見た債務残高の割合は世界トップです。

[図表1]主な国の債務残高(対GDP比)

[図表2]日本の普通国債残高の推移

さらに、債務残高は年々増加しています。

なぜここまで日本の借金が膨れ上がったかというと、社会保障費の増加が大きく関係しています。社会保障費とは、年金や医療、介護、子ども・子育てなどの分野に給付されているお金のことです。

日本の社会保障費は、この30年ほどで10兆円から30兆円台後半まで膨れ上がっています。1960年代までさかのぼると、社会保障費は歳出の10%ほどでした。それがいまでは、全体の約34%にまで増加。

なんと国家予算の3分の1が、年金や介護、医療といった社会保障の分野にあてられているのです。

ここまで社会保障費が増加した背景にあるのは、少子高齢化。1960年代といまでは、人口構成が大きく異なります。当時は若い世代が多く、歳出の多くは教育費や医療費に費やされていました。

しかし、現在は高齢層の割合が増え、それに伴って年金や医療費に社会保障費を費やす割合が増加しています。年金制度や医療費制度の改定は度々行われてきていますが、福祉を支えるはずの現役世代の減少が想定以上のスピードで進んでいると言えます。

[図表3]日本の人口ピラミッド

「日本の借金」は1,000兆円超(世界2位)・GDP比256.9%(G7トップ)…でも日本が「財政破綻」しないと断言できるワケ

(※写真はイメージです/PIXTA)

高校での投資教育が必須になるなど、経済に対する教育への関心が高まっています。そこで本連載では、専門的な知見を生かし、経済に関するニュースをわかりやすく解説することで人気を博している経済キャスターのDJ Nobby氏が、著書である『実は大人も知らないことだらけ 経済がわかれば最強!』(KADOKAWA)から、日本と世界の経済について解説します。

日本の歳出、約2割が国債費!?

国の歳出のうち、国債費が占める割合は約24兆円。1990年と比べると、約1.5倍になっています。

1960年は、歳出のうち国債費にかける割合は1.5%ほどでした。それが現在は22.3%にまで膨らんでいます。社会保障費と国債費を合わせて実に歳出の半分を超えているのです。

さらにこの状況で金利が上がると国債費もどんどん膨らみ、国の財政が締め付けられることになります。

内閣府の試算では、経済成長に伴う金利上昇であれば国債費の増加以上に税収が増え、それによって財政赤字が縮小するとされています。ただ、現在起こっていることは経済成長に伴う金利上昇ではなく、現実は厳しいと言えそうです。

[図表4]歳出総額の内訳(割合)

世界借金ランキングから見る日本

GDPに対する比率で見た世界の借金ランキングを見ると、日本は第2位。先進国ではアメリカにおよそ2倍の差をつけて圧倒的第1位となります。

借金の少ない国には2種類あります。1つは明確な基幹産業がある国。豊富な資源などの安定した収入要因があったり、基幹産業が金融業であったりと、産業構成に偏りのある国ほど借金が少ない傾向があります。もう1つは、国の規模が小さくあまり経済発展していないこと。そもそも借金ができないのです。

[図表5]世界の政府総債務残高(対GDP比)ランキング

■Nobby‘s point

日本の危機的状況は、財務省公認?

借金ができるということは、信頼されているということでもあります。国債残高が1,000兆円もあるということは、ある意味“日本には1,000兆円の借金を支える国民がいる”ということ。それだけ、国民がちゃんとお金を持っているのです。

ただこのまま国債発行が増え続けると、どうしても「税金が上がる」という方向に行ってしまいます。

財務省が作っている「これからの日本のために財政を考える」というHPには、どれだけ日本が危機的状況かということが詳しく記載されています。おそらくIMF(国際通貨基金)からの圧力もあり、とにかく債務を圧縮したいのでしょう。

一方で日本の金利は未だに過去最低水準に抑えられています。金利が低いということはそれだけ信用力があるということですが、どこまでこの状態を保てるかは未知数です。このまま無尽蔵に国債を刷り続けることには大きなリスクが伴うことを理解すべきです。

国家の経済破綻! 日本がデフォルトする可能性は?

2009年10月、ギリシャ危機が起きました。ギリシャ政府が借金を返せない「デフォルト」という状態に陥ってしまったのです。2000年以降だと、ギリシャ以外にもドミニカやエクアドル、コートジボワールなどもデフォルトを起こしています。

理由や状況は国によって異なりますが、デフォルトが起きる一番の原因は「見通しの甘さ」。経済成長率を甘く見積もってしまったために経済成長による税収増が果たせず、借り過ぎたお金を返せなくなってしまったのです。

ここで気になるのが「日本もいつか借金を返せない状態になり、デフォルトに陥るのでは?」ということ。

日本の国債発行残高は、現在1,000兆円ほど。ギリシャがデフォルトを起こしたときの債務が43兆円ほどなので、日本のほうが桁違いに多いことになります。

またGDP比も、ギリシャは170%ほどだったのに対し、日本は200%超え。明らかに日本の状況のほうが悪そうです。

ですが結論から言うと、理論上日本がデフォルトに陥ることはありません。なぜなら、これまでにデフォルトを起こした国と日本とは大きな違いがあるからです。ここではギリシャと比較しながら考えてみましょう。

◆日本は自国の通貨を持っている

ギリシャはユーロ圏のため、ユーロ建てで債券を発行しています。そのため、“お金が足りない分、自国で勝手にユーロを刷る”ということができません。対して日本は日本円という通貨を持っているので、借り入れが日本円で行われている限り、日本銀行がお金を刷ることができるのです。

◆日本の国債を買っているのは日本人

ギリシャの国債を買っていたのは、多くが海外投資家や海外の政府・金融機関でした。対して日本国債は、国内勢がその約96%を買っています。日本政府の借り入れは、ほぼ国内で完結しているのです。

■Nobby‘s point

日本人は間接的に国債を買っている

皆さんは「国債なんて買った覚えないよ!」と思うでしょう。多くの方は銀行に預金をしていますよね。その預金をもとに銀行が国債を買っているので、私たちは“間接的に”国債を買っていることになるのです。

今後さらに借金が膨れ上がり、日本政府が破綻危機に陥ることはあるかもしれません。でも日本の国債発行残高1,000兆円に対し、国民の総家計資産は2,000兆円を超えています。そう考えると、プライマリーバランス(歳出と歳入のバランス)の改善は必要ですが、いますぐデフォルトに陥るという状態ではないと言えます。

DJ Nobby

経済キャスター、金融コメンテーター、ラジオDJ