日産とルノー、提携見直しで基本合意 「世界3位の連合」転換点

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(上)日産自動車と(下)ルノー=いずれも村田由紀子撮影

 日産自動車は30日、仏自動車大手ルノーとの提携関係の見直しについて基本合意したと発表した。ルノーが持つ日産株の比率を43%から15%に引き下げ、日産が持つルノー株の比率と同水準にする。日産はルノーが設立する電気自動車(EV)の新会社に出資する。経営危機に陥った日産が1999年にルノーの資本支援を受けて以降、ルノーが主導権を握ってきた日仏連合は大きな転機を迎える。

 両社の取締役会で決定後、新たな提携関係について近く正式発表する。日産が30日に発表した声明によると、ルノーが保有する日産株43・4%のうち28・4%をフランスの信託会社に信託する。株式を段階的に売却するまでルノーは信託分の議決権を行使できないようにする。最終的に両社は15%の株式を相互に持ち合い、それぞれ15%まで議決権が行使できる。

 ルノーが新設するEVの新会社「アンペール」に日産が出資することでも合意した。出資比率は未公表だが、最大15%出資するとみられる。新たに中南米やインド、欧州での協業を強化する方針も示した。

 日仏連合は2016年に三菱自動車が加わり、3社連合となった。日産とルノーの出資比率見直しの協議は、ルノーのEV新会社への出資交渉と並行する形で昨秋から本格化。日産が持つEV関連技術をどの程度提供するかなどを巡って調整が難航していたが、ルノーが日産の知的財産利用を巡って一定の譲歩をしたことで両社が歩み寄った。ルノーの大株主である仏政府も出資比率の見直しを支持し、協議が進展した。

 日産にとってルノーとの資本関係見直しは20年来の悲願だった。フランスの会社法上、日産はルノーに対する議決権が行使できないなど不平等な関係にあり、日産社内に不満が募っていた。ルノーと仏政府が今回、両社の出資比率を対等にすることに同意したのは、ルノーのEV新会社に日産の参画が必要なことや、激変する自動車業界を生き残るために3社連合の維持・強化が不可欠と判断したためとみられる。

 調査会社のマークラインズによると、3社連合の21年の世界販売台数は777万台で、トヨタ自動車、独フォルクスワーゲンに次ぐ3位となっている。【福富智】