財務省が名言した「日本の財政は破綻しない」は、本当なのか?

財政再建したいなら移民を3000万人受け入れなさい【第5回】

財政再建したいなら移民を3000万人受け入れなさい

経済も財政も、まだ立て直せる!
各種シミュレーションや実例から徹底分析。
日本の閉塞感の根本原因とその対策。

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※本記事は、大山昌之氏のビジネス本『財政再建したいなら移民を3000万人受け入れなさい』(幻冬舎ルネッサンス新社)より、一部抜粋・編集したものです。

【前回の記事を読む】「いかに借金を減らせるか」ではない…国の財務内容を改善する方法

第一章 日本経済の分析

コロナ禍に至っても、財政均衡を強引に図るため、三十兆円近くの予算がいまだに使われていないにもかかわらず、一円のお金も景気対策のために使わなかった……。このため、かえってGDPがマイナス成長してしまい、更に財政が悪化してしまう……、近年の出来事で、コロナ禍の真っただ中において当時の菅義偉内閣が行ったこの間違った施策は、その典型的な例ではないでしょうか?

しかし、菅内閣だけでなくこのような事は、苦しい経営を強いられている企業の経営者ならば、ついついやりがちな事です。全ての経営者は、本当は間違っているとわかっていても、苦しい経営を強いられているため、どうしても目先の借金返済に追われてしまい、たびたび正しい決断が下せない事は、本当によくある事なのです。

市場が日本政府の借金問題で一番関心があるのは、実は日本の借金の額ではなく、この借金自体を政府がきちんとコントロールできているのかどうかという事です。残念ながら財政再建計画の詳しい中身を政府が公表していない以上、今の岸田政権や財務省からは、今後どのようにしてこの多すぎる日本の借金をコントロールしていくのかという計画の全容が全く見えてはきません。

反対に私の目からは、彼らがいかに選挙に影響しないようにしながら目先の国債発行額を減らす事に必死で、財政再建に必要なもっと大きな視点で国の借金を捉え、今後この借金とどう向き合っていくのかといった一番大切なところが、彼ら自身にも見えていないように感じます。

むしろ、今の政治家の先生達は、多重債務者が陥るような思考、あくまで国民に対してはさも調子の良い事をいいながら、陰で増税や社会保障費の削減などにより、目先の増え続ける借金を少しでも減らす事にしか、もう頭が回らなくなっているのではないでしょうか。

日本の財政は本当に破綻(デフォルト)しないのか?

二〇二一年十一月号の『文芸春秋』にて、現役の財務事務次官による、当時、加熱していた衆議院総選挙における各党のいわゆる「ばらまき政策」を批判する投稿が寄せられ、世間ではこの問題が大きな話題になりました。

政府の公庫には無尽蔵にお金があるわけではないのでこのようなばらまき政策は、その後の深刻な財政悪化を引き起こしかねないという懸念から、彼はこのような投稿をしたそうですが、これを発表したと同時にたくさんの有名な知識人や経済学者から、彼の投稿に対して数多くの反発が巻き起こりました。

その主な理由は、日本の国債は自国通貨で返済しているので、返済に困ったら日本銀行がお札を刷ればいいだけで、絶対に財政は破綻しないという意見から、二〇二一年十二月時点で日本の家計の金融資産は、約二千二十三兆円(日銀の発表データ)にものぼるのだから、いざという時は政府はこれを国民から取り上げて返済すれば良いだけの話で、政府債務がこの数値を超えない限りは大丈夫だ、というものまで様々な意見が持ち上がりました。

そしてこのような意見により、たとえ新型コロナウイルス対策のために今回莫大な財政出動を行ったとしても、日本の財政悪化を心配する必要は全くないという意見が、その当時の世論の大勢を占めていたように私は感じました。

財務省のホームページを見ても、日本の国債はデフォルトしないとハッキリ書かれているので、今回の財務事務次官の主張は財務省の公式見解とも真っ向から対立している事になります。

ですが、本当に日本の財政はこのような理由から、破綻(デフォルト)する事はないといい切れるのでしょうか? 私の見解は全く反対で、このまま行けばデフォルトの可能性は十分あると思っています。なぜなら、お隣の韓国のように実際に破綻した国があるからです(正確にはデフォルトを起こす前にIMFが救済しました)。

そもそも、韓国経済がデフォルトしてしまった理由には、外貨建ての国債を発行していたのが原因の一つに挙げられます。それではなぜ韓国は、日本のように自国通貨建てで国債を発行しなかったのでしょう。それは、韓国のような自国通貨の弱い国では、自国通貨建ての国債では誰も買い手が見つからなかったためです。

財政破綻に対する最大の疑問は、将来日本も韓国同様、円建ての国債では誰も引き取り手がいなくなる日が、いつかそのうち訪れるんじゃないのか?という点です。私はそれが政府債務が家計の金融資産を上回った時だと考えています。

財務省のホームページには、ハッキリと日本国債はデフォルトしないと書かれていますが、それはあくまで現在発行している円建ての国債に限った話で、いずれ発行せざるを得なくなるであろう外貨建ての国債については、話が全く変わってきます。

※本記事は、2022年9月刊行の書籍『財政再建したいなら移民を3000万人受け入れなさい』(幻冬舎ルネッサンス新社)より一部を抜粋し、再編集したものです。