2023年も1カ月が過ぎ、早くも2月になりました。2月15日は2カ月に1度の年金支給日です。
年金生活者は2カ月分の年金を受け取り、日々の家計をやりくりします。
しかし、そんな厚生年金や国民年金からも「天引き」されるお金があることをご存知でしょうか。
給料と同じように、税金と保険料は年金からも天引きされるのです。
くわしく見ていきましょう。
1. 「厚生年金と国民年金」の基本をおさらい
まずは、公的年金である「厚生年金と国民年金」の基本をおさらいします。
出所:日本年金機構「国民年金・厚生年金保険 被保険者のしおり」(令和4年4月)・厚生労働省「日本の公的年金は『2階建て』」をもとにLIMO編集部作成
1.1 国民年金(老齢基礎年金)
1階部分にあたる国民年金(老齢基礎年金)には、日本に住む20~60歳未満の方が原則加入します。
保険料は一律で、2022年度は月額1万6590円、2023年度は1万6520円です。
40年間納めることで満額の年金が受け取れますが、未納や免除された期間があればその分減ってしまいます。
1.2 厚生年金(老齢厚生年金)
公務員や会社員などは、国民年金に上乗せして2階部分の厚生年金にも入ります。厚生年金の場合、保険料は一律ではありません。
現役時代の報酬に応じた等級で保険料が決まり、加入期間や納めた保険料によって、受け取れる年金額が変わってきます。
日本は国民皆年金なので、このように誰もが年金に加入します。この結果、老齢年金はいくらぐらい「額面」として受給できるのでしょうか。
2. 「厚生年金」月平均の受給額はいくらなのか
ここからは、厚生労働省年金局の「令和3年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」から、厚生年金の実際の受給額を見ていきます。
会社員や公務員だった方が受給する厚生年金の金額には、国民年金部分も含まれています。
2.1 厚生年金の平均受給月額
〈全体〉平均年金月額:14万3965円
※国民年金の金額を含む
2.2 厚生年金月額階級別の老齢年金受給者数
出所:厚生労働省「令和3年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
現役時代の収入で保険料が決まるので、厚生年金の受給額は個人差が出やすいのが特徴です。
3. 「国民年金」月平均の受給額はいくらなのか
同じく厚生労働省年金局の「令和3年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」から、次は国民年金の平均受給額を抽出してみます。
3.1 国民年金の平均月額
〈全体〉平均年金月額:5万6368円
3.2 国民年金月額階級別の老齢年金受給者数
出所:厚生労働省「令和3年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」
1万円未満:7万27人
同調査からは、「6万円以上~7万円未満」の人が突出して多いことがわかります。
自営業や専業主婦だった方などは、国民年金のみの受給になります。
厚生年金がない場合、年金だけで暮らすのは心もとない金額であるといえます。
4. 厚生年金と国民年金から天引きされるお金
厚生年金と国民年金の「額面」を見ていきました。
ここからは、年金から天引きされる4つのお金を見ていきましょう。
4.1 介護保険料
介護保険料は、40歳から64歳まで健康保険料に含めて支払います。しかし、65歳になると単独で支払うことになります。
年金の年額が18万円以上の場合、年金からの天引きで納めることに。
さらに、介護保険料の支払いは一生涯続きます。介護状態になれば介護保険料の支払いが終わると勘違いする方もいますが、支払いはずっと続くので注意しましょう。
介護保険料はお住まいの自治体によって異なりますが、増加傾向にあります。
4.2 国民健康保険料や後期高齢者医療制度の保険料
国民健康保険、あるいは原則75歳以上の方が加入する後期高齢者医療制度の保険料も、年金からの天引きで納めます。
「介護保険料が特別徴収になっている」など一定の条件もあるため、普通徴収(納付書や口座振替)になるケースもあります。
4.3 個人住民税
前年中の所得に対してかかる住民税についても、年金所得が一定になれば課税され、年金天引きで納めます。
保険料とは違い、収入が一定に満たなければ非課税となり、支払い義務がないケースもあります。
障害年金や遺族年金を受給する場合は非課税です。
4.4 所得税および復興特別所得税
一定額以上の年金にも所得税がかかります。公的年金は雑所得となり、65歳未満なら108万円、65歳以上なら158万円を超えると課税されます。
また「東日本大震災からの復興のための施策を実施するために必要な財源の確保に関する特別措置法(平成23年法律117号)」により、所得税の源泉徴収の際に併せて復興特別所得税もかかります。
ただし、障害年金や遺族年金を受給する場合は非課税です。
5. 老後に向けて年金以外の準備が必要に
厚生年金と国民年金の仕組み、さらに受給額の額面や天引きされるお金を見ていきました。
もし夫婦が平均通りの厚生年金を受給するなら、夫が16万円、妻が10万円の合計26万円です。
しかし夫は年間192万円なので課税され、手取りは額面通りといかないでしょう。夫婦ともに健康保険や介護保険などの社会保険料も天引きされるため、手取りはさらに減ります。
少ない年金から引かれるお金が大きいとなれば、老後の貯蓄がある程度必要といえます。
預貯金だけでなく、民間の個人年金保険、あるいはiDeCo(イデコ:個人型確定拠出年金)などで備える方法もあります。
老後に向けて、自分に合う方法で対策を始めていきましょう。