年金支給額1.9%増は焼け石に水…高齢者の物価上昇率は平均2.5%より過酷、足元では5%に迫る

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高齢者は眼中にないのか(加藤勝信厚労相)/(C)日刊ゲンダイ拡大する

 高齢者の方が物価高が深刻──。31日の衆院予算委員会でそんな実態が明らかになった。立憲民主党の後藤祐一議員が取り上げた。
 2023年度の年金支給額は3年ぶりに増える。ただし、年金増加局面に伸び率を抑えるマクロ経済スライドが発動され、引き上げ幅を0.6%圧縮。既に年金を受給している68歳以上は前年比1.9%アップにとどまり、昨年の物価上昇率2.5%に及ばないのだ。
 さらに後藤氏は、高齢者世帯の物価上昇率が全体の平均より高いことを指摘。加藤厚労相は「総務省の発表によると、世帯主が65歳以上の世帯の22年の物価上昇率は2.9%で、(年金支給の)ベースとなっている率(2.5%)よりも高くなっている」と認めた。
 なぜ、高齢者世帯の物価上昇率は高いのか。日刊ゲンダイの質問に、総務省の担当者はこう分析する。
「高齢者世帯は、今の物価高騰を牽引している食料や光熱・水道費のウエート(割合)が大きいからでしょう。高齢者は教育や教養・娯楽への出費が少ない分、食料の割合が高くなる。また、高齢者は家にいる時間が長く、現役世代より光熱・水道費がかかってしまいます」(物価統計室)
 総務省の発表資料を基に日刊ゲンダイがウエートを換算した(トータル100%)。食料は全体が26.26%、高齢者世帯(65歳以上)が28.48%。光熱・水道は全体が6.93%、65歳以上が7.74%だ。70歳以上に絞ると、光熱・水道は8.00%に跳ね上がる。エネルギー・食品中心のインフレ負担は高齢者ほど酷なのだ。

加藤厚労相は野党の要求ににべもなく…

高齢者世帯の物価上昇率は足元で5%に迫っている(写真はイメージ)/(C)日刊ゲンダイ

高齢者世帯の物価上昇率は足元で5%に迫っている(写真はイメージ)/(C)日刊ゲンダイ拡大する

「全国の先行指標とされる1月の東京都区部の消費者物価指数は上昇率が4.3%でした。高齢者世帯の物価上昇率は足元で5%に迫っていてもおかしくありません。アップ率1.9%の年金では物価上昇の半分にも満たない。これでは暮らしが成り立たない。真冬にエアコンを切ったり、医療を控える高齢者が続出しかねません」(立正大法制研究所特別研究員・浦野広明氏=税法)
 後藤氏は、高齢者が直面する実情に即した年金支給を求めたが、加藤は支え手である現役世代の負担や年金財政への影響などを挙げ、にべもなかった。
「物価と年金のギャップを埋めるべく、年金生活者に対し、一時金を給付するなどの動きもみられません。1月のコロナの死者数は初めて月間1万人を超えましたが、大半が高齢者です。岸田政権の高齢者切り捨ては目に余るものがあります」(浦野広明氏)
 年金生活者はもっと怒ったほうがいい。