大容量のバッテリーを積んでるのになぜ? ハイブリッド車がガソリン車と同じ「12Vバッテリー」も搭載する理由

この記事をまとめると

■ハイブリッカーには走行用に専用の大容量バッテリーが必要だ

■ではなぜ内燃機関車と同じ12ボルトの鉛酸バッテリーを搭載するのか?

■2種類のバッテリーを積む理由について解説する

HVが2種類のバッテリーを積む理由とは?

現在のハイブリッドカー(以下HV)は、内燃機関を主動力として電気モーターを補助動力に使う方式と、電気モーターによる走りを主動力とし、内燃機関を補助動力、あるいは動力用バッテリー充電の発電用として使う2つのタイプに分けられる。ただ、いずれの場合も電気モーターを駆動するには大電力が必要で、走行用に専用の大容量バッテリーを搭載する状態となっている。

では、HVは大容量バッテリーがあるにもかかわらず、なぜ内燃機関車と同じ12ボルトの鉛酸バッテリーを搭載しているのだろうか? その理由は、動力用バッテリーは電圧も高く、モーター駆動専用の規格となっていることに対し、自動車には灯火類やナビゲーション、カーオーディオなどといった従来からの電装品も装備され、これらのための電源が必要となるからだ。さらに、もっとも大切な用途としては、HVシステムを制御するための制御電源が必要で、12ボルトバッテリーがこの役割を担っている。

日産エクストレイルの走り
この12ボルトのバッテリーは、補機用バッテリーとも言われ、走行用バッテリーがフル充電の状態であっても、補機用バッテリーが機能しないと(バッテリー上がりなど)HVシステムが制御できず、HV車は身動きがとれなくなってしまうのだ。

さて、2種類のバッテリーを積むHVだが、これらのトラブルについて考えてみよう。まず補機用バッテリーだが、これは従来型と同じく12ボルト仕様の鉛酸バッテリーで、HVシステムの制御や車両電装品の電源として使われるのは説明したとおりだ。そしてこのバッテリーは、通常の内燃機関車と同じく、使用した分の電力は走行中に充電される仕組みだが、機能しなくなると(バッテリー上がりも含めて)HVシステムを起動、制御することができなくなり、結果としてクルマは走ることができなくなってしまう。

補機用バッテリーはHV専用のものを使わなければならない

バッテリー上がりの対策は、内燃機関車と同じく、バッテリー充電器を使ってバッテリーに充電する、ブースターケーブルを使って他車から救援してもらう、などの方法があるが、バッテリーがダメになってしまった場合は、ひとつ注意が必要だ。

というのは、補機用バッテリーの搭載位置を確認すればよく分かるが、トランクルーム内やリヤシート下部など、通風が悪い位置、あるいは密閉に近い状態で搭載される例がほとんどである。しかし、鉛酸電池は、充電中に水素ガスが発生するため、HV専用バッテリーには水素ガスを大気中に逃がす専用ホース(チューブ)が設けられている。通常の内燃機関用バッテリーではこの機構がなく、容量、サイズなどの規格が同一であるからといって通常のバッテリーをHV車で使うことは、非常に危険な行為となってしまう。HV用バッテリーには、水素ガス放出機構のついた専用バッテリーを使わなければならない。

ハイブリッドのバッテリー
では、走行用バッテリーが劣化するとどうなるか。メーカーの保証規定は、5年間または10万km走行の場合が多く、ある意味、バッテリー寿命限界のひとつの目安と考えてもよいが、実際に走行用バッテリーが劣化してくると、燃費が悪くなったり、劣化が進むと発進加速、追い越し加速が悪くなったり、登坂時にパワー不足を感じるようになる。また、バッテリーの所期仕様に変化(低下)が生じるため、HVシステムの警告機能(警告灯の点灯など)が作動するケースもある。

確実に燃費が悪くなったと判断できるケースは、バッテリーが所期の性能から低下しつつあることを表す症状で、加速性能や登坂性能が落ちていると感じられるケースは、すでにバッテリーの電圧が低下している場合が多く、交換が必要となる場合が多い。こうした症状が感じられた場合、とりあえずメーカー系の整備工場に相談してみることをお勧めしたい。点検した上で、バッテリーを交換するか、あるいは車両の買い替えを検討するかは、それぞれユーザーの事情によって異なってくるので何とも言えないが、ニッケル水素、あるいはリチウムイオンによる走行用バッテリーには寿命があり、かなり高価なパーツになるため、対応策は慎重に考えたほうがよいだろう。