簡単に解約できれば苦労はない 実家の“固定電話じまい”を成功させた子供たちの奮闘

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親の“固定電話じまい”を子供たちが後押しした実例を紹介(イメージ)

 携帯電話やスマートフォンの普及で、自宅の固定電話の存在意義が薄れつつある。不用と感じれば固定費の削減のために解約するのが自然だが、ほとんど使っていないのに、そのままにしている場合も少なくない。特に高齢者の場合、長年、固定電話を契約していることもあって、なかなか解約に踏み切れないようだ。高齢親の“固定電話じまい”に挑んだ子供たちの奮闘ぶりを紹介しよう。

かかって来るのはセールス電話か特殊詐欺

 メーカーに勤務する40代男性・Aさんが、70代の両親の固定電話を解約したいと思ったのは、詐欺被害に遭いかけたことがきっかけだった。

「母の話を聞いていると、固定電話にかけてくるのは、概ね不用品買取りやリフォームの営業、お墓の売り込みの電話といったもので、そんなもののために固定電話回線は無用だなと常々思っていたんです。極めつけは、父が振り込め詐欺(特殊詐欺)の電話を真に受けてしまったことです。幸いお金を振り込む寸前で私と連絡がつき、事なきを得ました」(Aさん)

 両親の平穏な生活を脅かす原因を少しでも排除したかったAさん。固定電話の解約を親に提案するも反対にあってしまった。

「両親とも、『固定電話を設置していることが大事なんだ』という謎理論の一点張り。『信用のためにお金を払っている』というんです。とはいえ、ほとんど使っていないのに毎月1800円くらい払っているのは無駄でしかないし、振り込め詐欺のリスクもある。両親はそれぞれスマホを持っていて、電話連絡はそれでできるので、固定電話がなくても不自由ないはずなんですけど……」(Aさん)

 固定電話の解約に難航していたが、潮目が変わった。両親の友人たちが、続々とスマホに切り替え、かつLINEを始めたのだ。

「これはチャンスだと思い、両親に対して、友人たちとつながるためには必要だと説得し、LINEとLINE通話のやり方を教えました。それと同時に、LINE通話なら無料だから、電話連絡のためにわざわざ固定電話料金を払う必要はないということ、さらに固定電話だから怖い電話がかかってくることが多いということを説明し、固定電話からの“卒業”を提案しました。

 実家にある能動的に使っていない固定電話は、解約するタイミングを見失っているだけ。子供が背中を押してあげる必要があると思いました」(Aさん)

慣れ親しんだ番号がなくなるのは寂しいが…

 IT企業に勤務する30代女性・Bさんは数年前、実家の光回線契約にともない、固定電話のアナログ回線をひかり電話に切り替えた。にもかかわらず、70代の母親は固定電話をほとんど使っていないという。

「もともと固定電話は、祖母の介護関連の連絡をメインに使っているみたいで、光回線を契約した時に、ひかり電話もセットで契約しました。アナログ回線からひかり電話に移行したことで維持費が安くなったので、当時は私も親も満足していました」(Bさん)

 その後祖母が亡くなったことで、終活を意識するようになった母親。光回線や固定電話も見直すことになった。

「母はスマホをある程度使いこなせるので、LINEのやりとりも問題なし。ただ、あまりネットは利用しないのに毎月定額料金がかかるのは無駄だと思い、固定電話も光回線も解約し、スマホを国内通話料が無料になるアプリがあるキャリアに乗り換えました。

 固定電話の解約は、たかが電話番号なのに喪失感があったのも事実です。私が生まれてからずっと親しんできた番号でしたしね。それでも今は、スッキリした気分です」(Bさん)

 固定電話は不要だと思っていても、これまで長く使い続けていた人ほど解約しづらいのも事実。“固定電話じまい”は家族、特に若い世代の子供たちの協力があったほうがやりやすいのかもしれない。(了)