認知症の原因となる「たんぱく質のゴミ」がたまる要因とは【脳がよろこぶスープ】

2025年には、 65歳以上の5人に一人が認知症になるとされ、 介護が必要になる人の数が爆発的に増えることが予想されています。そこで、脳科学者・薬学者の杉本八郎先生と栄養学の専門家、博士(栄養学)の松崎恵理先生が最新エビデンスをもとに考案した健康スープレシピ『認知症研究の第一人者がおしえる脳がよろこぶスープ』から、認知症の原因となる「アミロイドβ」がたまる要因と、認知症予防の効果が期待できるスープをご紹介します。

文/杉本八郎・松崎恵理

脳のなかにたまるゴミや毒その正体はたんぱく質

認知症患者の67%を占めるアルツハイマー型認知症ですが、発症するしくみについては、じつはまだ明らかになっていません。

しかし、現時点で有力な原因とされているのが、脳のなかにたんぱく質のゴミができるという仮説です。原因物質とされるたんぱく質には、次の2種類があります。

ひとつは、脳の神経細胞のまわりに沈着するたんぱく質の一種「アミロイドβ」です。
ふたつめが、神経細胞内に蓄積して、神経の線維の変化や脳の萎縮を起こす「タウたんぱく質」です。
それぞれ詳しくみていきましょう。

40代後半からたまり始めるアミロイドβは、健康な人の脳にも存在しています。脳が健康であれば、ゴミとして短期間で分解され、脳の血管を通じて体外に排出されます。

ところが、年齢とともに排出する機能が衰え、40代後半から脳内にたまり始めると、悪さをするようになります。脳内にたまったアミロイドβは、凝集して「アミロイド線維」になります。茶色いシミのように見えることから「老人斑」と呼ばれます。この塊が強い毒性を持ち、神経細胞やシナプスを破壊するのです。

神経細胞が破壊され死滅すると、情報の伝達ができなくなり、徐々に脳が萎縮し、その結果、アルツハイマー型認知症が進行していくと考えられています。

神経細胞を破壊し、死滅させるタウたんぱく質

タウたんぱく質は、通常であれば、細胞の骨格の維持に重要な働きをしています。神経細胞には、様々な物質を運ぶ道のようなものがあります。線路にたとえると、タウたんぱく質は、線路のレールを支える枕木のような役割を果たしています。

しかし、GSK3βやCdK5などのリン酸化酵素の働きで、過剰にリン酸化されると、糸くずのように固まります。この塊には毒性があり、神経細胞を破壊し、死滅させます。専門用語でこれを「神経原線維変化」といい、認知症の原因のひとつと考えられています。

タウたんぱく質は、60代後半からたまり始めるといわれています。

以上のように、脳のなかにたんぱく質のゴミがたまり始めると、神経細胞の死滅や記憶障害によってアルツハイマー型認知症を引き起こします。

では、なぜたんぱく質のゴミがたまってしまうのでしょうか?

その要因について、次の項で説明していきましょう。

アミロイドβがたまる要因は大きく3つある

約30年にわたり、アルツハイマー型認知症の研究を手がけてきた第一人者、米国カリフォルニア大学ロサンゼルス校のデール・ブレデセン博士は、アミロイドβがなぜ脳内にたまるのかに着目し、研究を進めました。

その結果、脳が何らかのダメージを受けた際に、その防御反応としてアミロイドβが発生することがわかったのです。

ダメージの要因は36個あり、ブレデセン博士はそれらを大きく3つに分類しました。
・炎症……食事、感染、虫歯など、様々な原因で起こる炎症
・栄養不足……ホルモンやビタミンなど脳に必要な栄養の不足
・毒素……カビや重金属などに含まれる毒素

博士は、患者の血液や遺伝子、体組成などを詳しく調べ、患者の状態に合った食事や運動、睡眠の指導、サプリメントの処方、解毒治療などを行ったところ、大きな改善がみられました。認知症を予防するうえで、いかに生活習慣が大切なのかを私たちに教えてくれる研究データです。

「脳がよろこぶスープ」基本のスープベースの作り方

認知症予防に最適な栄養素がたっぷり入ったスープの素。脳にいいだけでなく、かつお出汁が効いてうまみもたっぷり。冷凍庫に作り置きをしておけば、数分でおいしい認知症予防スープが完成します。