「厚生年金、月額15万円の手取りがこれだけ?」男性が額面とのギャップに落ち込む理由厚生年金と国民年金から天引きされる税金・保険料一覧

2023年となり、1月中旬には2023年度の年金受給額も発表されます。やりくり上手な方は、こうした情報を取り入れながら「マネープラン」を調整しています。

一方、老後のお金は年金だけで足りないと言われますが、まだ老後資金の準備ができていない人、どう準備すればいいかわからない方もいるかと思います。
まずはねんきん定期便やねんきんネットなどを確認し、見込額を確認してみましょう。仮に見込額が「月額15万円」だったとしても、そこで安心することはできません。
年金からも税金等が天引きされ、実際の手取り額はもっと減るからです。

年金の額面と手取りのギャップについて見ていきましょう。

1. 厚生年金を「月平均15万円」受け取れる男性は多い

2022年12月、厚生労働省年金局より「令和3年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」が公表されました。

こちらによると、2021年度ベースでの厚生年金(国民年金を含む)の受給額は、月平均で14万3965円です。

出所:厚生労働省「令和3年度 厚生年金保険・国民年金事業の概況」

男性平均:16万3380円

  • 女性平均:10万4686円

厚生年金の受給額は、現役時代に納めた保険料や加入期間によって決まります。さらに保険料は収入によって決まることから、「長く働いた方」「多く稼いだ方」がたくさん受給できるといえます。
こうした背景から、現在のシニア世代では男女差が残っていることが予想されます。
男性にとっては、月平均15万円の厚生年金を受給するのはそう難しくないと考えられます。

出所:総務省統計局「家計調査報告 家計収支編 2021年(令和3年)平均結果の概要」

総務省の「家計調査報告(2021年)」によると、65歳以上、無職単身世帯の生活費は月々14万4747円とされています。一概にはいえませんが、15万円の年金収入があれば、老後は安泰と感じてしまうかもしれません。

2.「厚生年金15万」から天引きされるお金に愕然

厚生年金が月平均15万円というのは、男性にとって決して高くない壁です。共働きが増えている今、女性にとっても目指せる水準といえます。

しかし、忘れてはいけないのが「年金から天引きされるお金」です。

給与から引かれるように、年金からも天引きされるのです。
年金から天引きされる金額について、ここでは八王子市に住む男性(75歳)の例を紹介します。

2.1 年金から天引きされる税金

厚生年金が月額15万円の場合、年間収入は180万円となります。年金しか収入がない男性は、所得税として4623円、住民税として1万6500円が天引きされます。

2.2 年金から天引きされる介護保険料

八王子市の場合、年金収入が180万円の方の介護保険料は年額7万9400円なので、こちらが天引きされます。

2.3 年金から天引きされる健康保険料

75歳の男性の場合、後期高齢者医療制度に加入しています。

東京都後期高齢者医療広域連合の所得割率と均等割額を用いて計算すると、保険料は年間約4万8800円です。こちらも年金から天引きされます。

2.4 厚生年金15万円の男性の手取りは?

年金から天引きされる税金や保険料を合計すると、年間で約15万円です。180万円-15万円=165万円なので、月額の手取りは13万円台となります。

※概算なので実際の金額とは異なります。また天引きされる金額は年度途中に決まるため、1年を通して同じ手取り金額になるとは限りません。

15万円あると思っていた年金が、実際には手取りで13万円台となれば、落ち込んでしまうかもしれません。

3. 老後に向けた対策を

年金には税金や保険料がかかるため、実際の振込額は額面と異なることを知っておきましょう。

手取り額を考えて、老後に向けた対策が必要になります。

3.1 老後資金をつくる

年金以外の資金として、貯蓄が必要になるでしょう。コツコツと銀行預金をする場合、デメリットは「流動性があること」「金利が低いため増やせないこと」といえます。
他の貯金とは色分けして確保することや、資産運用を取り入れて増やすことも選択肢に入れてみましょう。

3.2 健康づくりをする

老後の家計を圧迫するのは、予期せぬ医療費や介護費です。普段から健康づくりを意識しましょう。

特に定年を迎えると、体を動かす機会が減るという方もいます。地域の運動教室や健康診断の情報は、早くからチェックしておきたいですね。

3.3 生活費をダウンサイジングする

定年後の生活に向けて、徐々に生活費のダウンサイジングも意識しましょう。

すぐに支出を落とすのは難しいものです。予算を決めて、その中でやりくりする月を作ってみるのもいいですね。

4. おわりに

厚生年金「月15万円」から天引きされるお金を見ていきました。

中には20万円、25万円という高額受給者もいますが、この場合はさらに天引きされるお金が増えます。

額面どおりにもらえるわけではないことを知り、しっかり老後資金を確保しておきましょう。

マネープランに重要なのは、家計のやりくり力と情報収集力です。

例えば老後資金を作る手段として注目されているつみたてNISAやNISAにおいて、上限額や非課税期間が拡大される予定もあります。

こうした手段や年金制度の最新情報を知ることで、自分にとって必要なお金を効率良く準備しておきたいですね。

マネーセミナーのマネイロ

参考資料

執筆者

太田 彩子

太田 彩子

記者/編集者/元公務員

京都教育大学卒業。大学卒業後は教育関連企業での営業職を経て、2010年に地方自治体の公務員として入職。「国民健康保険」「後期高齢者医療制度」「福祉医療」等の業務に従事した。主に国民健康保険料の賦課、保険料徴収、高額療養費制度などの給付、国民年金や国民健康保険への資格切り替え、補助金申請等の業務を担う。特に退職に伴う年金や保険の切り替えでは、手続きがもれることで不利益を被ることがないよう丁寧な窓口対応を心がけた。その後、保険代理店にてマーケティング業務に従事。保険料比較サイトの立ち上げに参加した。乗合保険会社の商品ページだけでなく、保険の知識を普及するためのページ作成にも参加。現在はくらしとお金の経済メディア「LIMO(リーモ)」のLIMO編集部で、公的年金制度や金融の情報を中心に執筆中。さらにキャリアを生かし、社会保障制度や公的保険、民間保険でバランスよく備える方法を発信。またはたらく世代のお金の診断・相談サービスを行うマネイロでは、「【計算例付】厚生年金保険料はどのように決まる?ケース別算出方法や受給額を解説」「パートの年収130万円を超えたら?損しない年収は?社労士が教える扶養控除の仕組み」「【チャート付】遺族年金は誰がいつからもらえる?受給条件や金額、注意点を徹底解説」など、お金や年金制度にまつわる記事を発信中。小学校教諭一種免許、幼稚園教諭一種免許、特別支援学校一種免許取得。自身も「遠距離結婚」「ハイリスク出産」「小1の壁」でキャリアを断念した経験から、キャリアとマネープランの両立を目指す女性に向けた情報も発信する。京都府出身。