謎のステルス増税「森林税」がやっぱり道理に合わない理由

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あらゆる手管で国民から絞り出す… Cemile Bingol/iStock

<今年6月から、復興税に事実上代わる形で「森林環境税」が国民から徴収されている。しかし本当に復興や森林保護などに税金が使われるかは怪しい、と芸人のパックンは指摘します>

あなたの一番好きな「税」って、何ですか? 所得税が好き? それとも消費税派? 住民税を推し活中かな?  僕は……有名税だね。

バカバカしい!  税金はとても大事。だが、その使途である公的サービスの恩恵をありがたがっても、基本的に税金は国民に好まれない。増税ももちろん基本、嫌がられるものだ。できるなら有名税もなくしていただきたい。

しかし、政府に打つ手はある! 国民が「喜んで」までいかなくても「抵抗せず」に増税を受け入れさせる方法がある。それは国民が支持する事業に結びつけることだ。

その代表例が2011年の東日本大震災後に導入された新しい税。誰もが応援したい被災地の復興を目的として設けられたものだ。名前も「復興税(復興特別税)」と、分かりやすい。2013年から所得税率が2.1%上がり、住民税も13年度から一人年間1000円が追加で徴収され、法人税も12~13年度に増税された大胆な政策だが、反対の声の音量は当時も今も小さい。政府からみれば大成功だ。

低所得者に厳しいステルス増税

その復興税は昨年度、住民税追加分の期限が切れた。しかし1000円分減税かと思いきや、今月から同じ一人1000円の新しい税が導入されてしまった。その名は「森林環境税」。また国民が応援したくなりそうな、反対されなさそうなテーマで、どう見ても政府は「あの感動をもう一度!」と、復興税の成功を再現しようとしているようだ。

復興と同様に、森林や環境を保護する公共事業はとても大事だし、公金を使うべきだ。それは当然だが、この特別税がないと財源が確保できないなんてナンセンスだ。現に、この特別税なしに森林環境譲与税というものが2019年から国が自治体に給付されているのだ。今月からその譲与税の財源に、われわれの1000円を充てるとのこと。

どうしても増税が必要だったら、普通に所得税や法人税などを上げればよいはず。そうしないで、所得が低い人にこそ重い負担となる、逆進的な定額式にしたのはなぜか? やはり、復興税の枠をしれっとすげ替えて、増税に気づかせないためだろう。政府が一生懸命アピールしている定額減税と全く違う扱いだ。ゆえに、巷で「ステルス増税」と非難されているわけだ。

しかし、この件に僕の増税センサーはすぐ反応した。まず「○○税」と名前がつけられた時点で僕は疑いたくなる。特別な名前がついていても、お金に色はつかない。

「森林環境」という名目で国が収税しても、そして同じ名目で都道府県に交付されたとしても、そのお金が必ずしも森林や環境の保護に使われる保証はない。復興税も3.11で被災していない地域も含めて全国に交付され、もちろん復興以外の目的にも使われた。

それもそうだ。どんな名目でお金をもらっても、それがその地域のニーズに基づき優先度の高い順に使われるのは当然。たとえ森林や環境保護を積極的にやっている地域でも、新しい財源が増えたからその予算が増えるとは限らない。

謎のステルス増税「森林税」がやっぱり道理に合わない…

パックン(パトリック・ハーラン)パックンのちょっとマジメな話

謎のステルス増税「森林税」がやっぱり道理に合わない理由

例えば、あなたが知り合いからお米券をもらったとしよう。それを使ってお米の消費量を増やしますか? 変わらないのではないかと、(あなたの食生活を全く知らない)僕は推測する。「いちほまれ」など、少し高めなお米を買うかもしれないけど、お米券を使ったおかげで浮いたお金を衣類、貯金、娯楽などに費やす可能性もある。そこで米米CLUBのコンサートに使ったら妥当な気がするけど。

政府のお金の使い方も一緒。その有名な例が宝くじだ。アメリカでは「利益は公立学校の資金になる!」という触れ込みで法改正をして宝くじの販売を始めることが多い。もちろん、利益の一部は学校に回されるが、結局その分、州の教育予算が減らされるだけで、学校に入る合計の金額は増えないケースが相次いでいる。まあ、浮いたお金で米米CLUBを学園祭に呼ぶんだったら許そう。

森林税が必要なら、「防衛税」はどう?

そういえば日本でも教育は大事だし、学校にもお金が必要だ。森林税があるなら、なぜ「教育税」はないのかな? 「保育税」もないし。もっとストレートに「海洋税」もあってしかるべきではないか?

もちろん公共事業はほかにも沢山ある。森林環境税が必須だったら、道路税、消防税、警察税、健康税、議会税などなども必要と思われるね。その中でも、最近一番予算が増えているのは防衛費だね。なぜ「防衛税」を作らないのか?

それは多くの国民が反対するはずだからだ。しかし、あまり反対されない森林環境税でお金を集めれば、浮いた分の公金を防衛予算に回すことができるので、防衛税と言わなくても結果は一緒。そういえば、防衛省は前からレーダー探知を免れる戦闘機を欲しがっていたね。ということは、ステルス税はステルス機に使われるかも?!

○○税という名前に惑わされないで、国民はこの件も含めて、全ての税の取り方や使い方を常に検証し、精査してほしい。公平性、妥当性、有効性、必要性が納得できていればどの税も反対されないだろう。むしろ、好きな税はと聞かれたら、全部だぜい! と答えるかもね。