減税帳消し〝給与明細ショック〟「20万円負担増」の実態 一時的に恩恵、複雑な税制で徐々に徴収…定額減税では消費喚起効果は限定的

 

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岸田首相は定額減税の「恩恵」を強調するが…

6月から定額減税

6月から所得税と住民税の定額減税が実施される。給与明細に減税額の記載を義務付けて「恩恵を実感いただく」と岸田文雄首相は言うが、「4万円」では消費喚起効果は限定的だ。政府のいう通り給与明細をよく見ると、目立つのは直接税や社会保険料の負担増で、この10年間で平均「20万円」も増えている。識者は「負担増は半永久的に続く」と警告する。

「可処分所得」3年連続で減少

岸田首相は22日の参院予算委員会で「来月から国民は減税効果を実感できる。集中的な広報など発信を強めていく」と説明した。

定額減税の給与明細への明記に関する作業が追加された場合、企業の経理担当者の事務負担が計約40~52時間増えるとの民間の試算もある。

よく見ろというから、給与明細をチェックすると、減税の額よりも「こんなに引かれているのか」と改めて気付く人も多いのではないか。

国民や企業が所得の中から税金や社会保険料をどれだけ払っているかを示す「国民負担率」は、2013年度に40・1%だったが、22年度は過去最高の48・4%まで上昇した。24年度も45・1%と高水準が続く。「五公五民」といわれるゆえんだ。

総務省の家計調査をもとに、2人以上の勤労者世帯の1年間の直接税(所得税・住民税など)と社会保険料の平均について、13年度と18年度、そして直近の23年度で比較したのが別表だ。介護保険料や公的年金保険料、所得税などが増加傾向にあり、直接税と社会保険料などの合計は13年度から23年度で約20万円増えている。

一方、実収入から直接税や社会保険料などを差し引いた「可処分所得」は、21~23年度まで実質で3年連続で減少している。特に23年度は対前年比4・5%減と大幅に落ち込んだ。

ユーチューブなどで税制などについて発信している税理士の板山翔氏は「年収400万円の40歳以上の世帯について、09年と24年で比較して試算すると、健康保険と厚生年金だけで年間9万~10万円近くの負担増となっている。09年当時は消費税率も5%だったこともあり、世帯年収などが同じ条件でも、15年前とは可処分所得に大きな差がある」と解説する。

政府が定額減税をアピールする半面、75歳以上の医療保険料は24~25年度に段階的に引き上げられる。現役世代も扶養控除や配偶者控除の見直しが議論の対象だ。

前出の板山氏は「増税に打って出れば、世論の批判は免れないだろう。今回の定額減税のように一時的に恩恵を与えながら、複雑な税制で徐々に徴収していくというのは、世界各国で行われる常套手段だ」と強調した。

今後も家計への懸念材料は多い。6月使用分(7月請求)の家庭向け電気料金が大幅に値上がりする。価格を抑える補助金の終了に加え、電気料金に上乗せする再エネ賦課金(再生可能エネルギー発電促進賦課金)も4月に引き上げられたばかりだ。

26年度には少子化対策の柱となる「子ども・子育て支援金」が創設される。支援金は月50~1650円の負担になると試算されている。来月からは森林環境税の徴収(年1000円)も始まる。

永濱利廣氏、5兆円は支援より将来の負担増回避策に活用する方が賢明では

第一生命経済研究所の永濱利廣首席エコノミストは「控除の縮小案や、国民年金の保険料納付期間を5年延長する案などが浮上している。日本のここ10年の国民負担率の上昇幅は、他のG7(先進7カ国)諸国の2倍以上だ。今後もこの流れが続く可能性もあり、半永久的な負担増が懸念される」と指摘する。

個人消費は冷え込みが続き、1~3月期の実質国内総生産(GDP、季節調整済み)速報値でも4四半期連続の減少となった。リーマン・ショックが直撃した09年1~3月期以来15年ぶりだ。

岸田首相側近の木原誠二幹事長代理は26日のフジテレビ番組で、定額減税の来年以降の継続も示唆した。

永濱氏は「定額減税では消費喚起効果は限定的だろう。給付の方が効果が大きかったのではないか。給与明細を見る人が増えれば、政府の思惑とは逆に、国民が負担増を実感する機会となりかねない。定額減税や給付など今回の支援策に約5兆円の予算を使うのであれば、将来の負担増を回避する施策に活用する方が賢明だったのでは」と語った。