死ぬときに、人は「走馬灯」は見ていない…最新の研究で分かった「心停止後の脳活動」の意外な新事実

ジェットコースターで結石を出す、うんちを移植してガンや認知症を治す、万引きや虐待の時に活性化する脳の部位がある…。こうした研究は実際に存在するものです。

そして、最先端の研究分野ではこのほかにも身体や病気について次々と新しい事実が明らかになっています。そんな“人体の話”をまとめたのが『ウソみたいな人体の話を大学の先生に解説してもらいました』。

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Xのフォロワー22万越えの大人気ニュースサイト「ナゾロジー」の協力のもと、岡山大学大学院教授の中尾篤典氏と脳神経科学者の毛内拡氏が解説します。(※本記事は同書の一部を抜粋・編集したものです。)

心停止後、脳では何が起こるのか?

人が死ぬときには脳では何が起こるのでしょうか。

死ぬ間際には走馬灯のように記憶がフラッシュバックしたり、臨死体験をしたりするといわれており、真面目に研究がなされています。

しかし、人がいつ亡くなるかを完全に予期することは難しく、死の間際の脳活動を科学的に検証するのは困難でした。

最新の研究では、てんかん治療のために脳活動を記録していた87歳の患者が予期せず心臓発作で亡くなり、心臓停止の30秒前後の脳活動を記録する貴重なチャンスを得たといいます。(1)

その記録された脳波からは、夢を見たり、記憶を呼び起こしたり、瞑想したりするときと同じガンマ波と呼ばれる神経活動が促進されることが報告されました。

ガンマ波は高次の認知機能と関連し、集中、夢想、瞑想、記憶の検索、情報処理などで活発になるため、死の間際には、夢を見たり、過去の記憶を呼び覚ましたりといった体験をするのではないかと議論の的になりました。

一方で、その解釈にはいくつかの疑問が提起されています。

この研究では心停止後のガンマ活動は絶対的には減少していましたが、アルファ波、ベータ波、デルタ波など他の振動帯と比較して、相対的にはガンマ波の割合は増加していたに過ぎないといいます。

また、そのガンマ波の増加も原因については不確実性があり、筋肉の収縮の影響が否定できないといいます。

さらに、心停止の定義にも問題があり、実際には心停止が起きていない状態で脳波の変化が観察されていた懸念もあります。通常、心停止から約8秒後には脳活動の減少が始まり、約18秒後には脳活動がほぼ消失し、脳波が電気的に平坦になることが報告されています。

これは、心停止が起こると血流が途絶え、酸素や栄養が脳に供給されなくなるため、脳の活動が急速に減少することを示しています。

しかしながら、この研究では、心停止後も脳波の変化が観察されると主張しており、過去の研究や臨床経験とは矛盾しています。もしこの研究の結果が本当だとしたら、それは興味深いものであり、今後の研究が必要です。

さらにつづきの<鼻をほじると「アルツハイマー型認知症」が高まることが判明…!?ウイルスが“脳に入り込む”メカニズムの「意外な盲点」>でも最新の論文から解説する「人体の話」をお伝えします。

書影『ウソみたいな人体の話を大学の先生に解説してもらいました』