なぜ名作は80~90年代に多い? 近年の映画に立ちはだかる大きな壁

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今年2月に2週間限定で上映された映画『タイタニック:ジェームズ・キャメロン25周年3Dリマスター』ポスタービジュアル/「20世紀スタジオ」公式Twitter(@20thcenturyjp)より

「名作映画」と聞いて、まず真っ先に何が思いつくだろうか。『ニュー・シネマ・パラダイス』『天使にラブ・ソングを』『スタンド・バイ・ミー』『タイタニック』『ショーシャンクの空に』など、多くの人が80~90年代の作品を思い浮かべるのではないだろうか。
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実際に映画ファンの間でも、名作映画として名前が出るのはひと昔前の作品ばかり。もちろん2000年以降にも名作と評される作品は数多くあるが、「80~90年代の映画=名作」のイメージがあまりにも強すぎる。それは一体なぜなのか、大きな理由として80~90年代の作品が「古典」となっていることが挙げられるかもしれない。
古典とは過去に作られ、今もなお文化的価値の高いものを指す。そして80~90年代に作られた作品は、今の映画の「規範」、つまりは「お手本」となっているケースが多い。
1982年公開の映画『ブレードランナー』がそれまでのSF概念をガラリと変えたように、『E.T.』にインスパイアされた作品が多くあるように、昔の作品は後の世代に多大な影響を与え、映画製作者や映画ファンにとっての一つの模範となっている。
だからこそ令和になった今でも映画『タイタニック』が再上映されたり、いまだに『トップガン』のテレビ放送でネット上が沸いたりするのだろう。映画制作にまつわる見本と模倣の構造が、80~90年代の作品を名作たらしめているといえる。
ただ古典となっている映画は、80~90年代に限った話ではない。80年代以前に作られた作品にも、当然お手本となる映画は数多く存在する。それ以上に、80~90年代は社会的・文化的な変革が進んだ時代という点が大きく関係しているのかもしれない。
80年代、世界では「サッチャリズム」や「レーガノミクス」といった経済政策が台頭し、世の中全体がバブルの恩恵を受けていた。さらにCGをはじめとした最新の映像技術も発展し、多様な表現と実験精神が映画界を賑わせ始めたのもこの頃だ。
当時の政治的な動きや社会的な変化が映画作品にも大きく反映され、結果として数々の名作が生まれたのだろう。その時代の背景を描いた作品は、現在でも当時の空気感を感じ取ることができ、観る者に深い共感や感動を与えている。

また80年代に急成長したレンタルビデオ文化の影響も無視できない。今でこそサブスクリプションサービスによって何千本もの作品を気軽に視聴できる時代だが、まだサブスクがなかった頃はレンタルビデオ屋で「何を見ようか」と作品を選ぶのも一つの楽しみだった。
今年5月に放送された『マツコ&有吉 かりそめ天国』(テレビ朝日)では、“レンタルビデオ店の思い出”が話題に上がり、番組出演者の有吉弘行とマツコ・デラックスが「近所とはいえ、わざわざ歩いて行ってたんだよ」「でも話題の新作はレンタル中になっているから、ついまた『ロッキー』借りちゃうの」「あの時代ってそれが良かったよね。お気に入りを何十回も見る人って多かった」と当時を振り返っていた。
同時に「今は熟考するほど見る映画がない」とこぼしていたが、サブスクの普及によりコンテンツの消費スピードが速くなったことが起因しているのかもしれない。
そもそもひと昔前は今ほど娯楽も多くなく、“映画鑑賞”そのものが特別な体験であった。その感動が記憶に深く刻み込まれているため、いつ見ても昔の映画は懐かしさや特別な感情を喚起させるのだろう。
対して現代は、インターネットの発達によりゲームやSNS、YouTubeなど、映画以外にも楽しめるコンテンツで溢れている。総務省が発表した「令和4年版 情報通信白書」によると、インターネットの平均利用時間は年々増加傾向にあり、2017年に1日平均100分であったのが2021年には170分以上に膨れ上がっているという。
結果、映画鑑賞の特別感が昔より薄れ、その体験が記憶に残りにくくなってしまったのだと考えられそうだ。
とはいえ00年代以降の作品に関しても、時間が経つにつれて「名作」と呼ばれる可能性は十分にあり得る。また、さらなる技術の発展や時代の流れによっては80~90年代の名作を超える作品が誕生するかもしれない。